こんにちは、ゆうじんです。
私の好きな作家の一人、吉村昭の小説を本棚から引っ張り出し、久しぶりに改めて読みました。吉村氏の小説はどれも面白くて、今回もあっという間に読み終えてしまいました。
今回再読したのはこちら、吉村昭氏の「破船」(新潮社)です。
吉村昭氏とは
吉村 昭(よしむら あきら)氏は、緻密で周到な取材に基づく記録文学や歴史文学を得意とした作家です。1927年5月生まれで、残念ながら 2006年7月にお亡くなりになっています。
主な著作は、「星への旅」「戦艦武蔵」「関東大震災」「ふぉん・しいほるとの娘」「破獄」「高熱隧道」「羆嵐」などがあります。
吉村氏の小説は、徹底した資料調査、現地調査、地道な関係者へのインタビューなどを素地に書かれており、ノンフィクションに通じるものがあります。
どれも圧倒的なリアルさがあり、読み始めるとぐいぐい引き込まれます。
「破船」とは
「破船」はそんな吉村氏の長編時代小説です。1980〜1981年にかけて雑誌「ちくま」に連載され、1982年に筑摩書房から、現在は新潮社から刊行されています。
(あらすじ) 北の海に面した貧しい漁村。村の畑は小石が多く痩せた土地、海の恵みも十分ではない。 海が荒れる冬の夜、村人は浜で夜通し製塩のために火を焚き続ける。それは、村に途方もない恵みをもたらす「お船様」を招くためだった。寒村の風習に込められた恐ろしい事実とは。また、その風習が招く悲劇とは、、、。
本作の主人公の伊作は9歳の少年で、同い年の子供たちより小柄で痩せています。その少年、伊作の視点で、村の秘密や悲劇が書かれていきます。
私の感想は
現代の日本には物があふれていますが、わずか百年ぐらい前には、この作品に出てくるような貧しい村が実際あったのだと思います。
一応、小説としてはフィクションとなっていますが、記録文学の巨匠、吉村氏の作品であり、寒村の実情や悲劇が非常にリアルに書かれています。文章自体は淡々と書かれていますが、その内容はリアルで怖いぐらい重々しさを感じさせます。
実際、この村で行われているようなことは、各地に残る記録や伝承等で確認されています。お船様を招くための風習は許されることではありませんが、村のおかれた実態を考えると単純に否定も肯定もしにくいと思います。
また、寒村の日常と同様に、村を襲う悲劇についても淡々と最後まで書かれていくため、より一層恐ろしさを感じます。
吉村氏の作品は、どの作品も一度読みはじめると、間違いなく、引き込まれます。
気になった方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
では。