オトフリート・プロイスラー「クラバート」(偕成社文庫)児童文学の傑作!

こんにちは、ゆうじんです。

質の良い児童文学は、大人の鑑賞にたえる面白いものです。今日ご紹介するのも、そういう本の一つです。

それは、こちらオトフリート・プロイスラーの「クラバート」(偕成社文庫)です。

オトフリート・プロイスラーとは

オトフリート・プロイスラー氏(1923年10月20日〜2013年2月18日没)は、有名なドイツの児童文学者です。1953年から1970年にかけて小学校の教師を務め、校長も経験しています。

氏の代表作には「大どろぼうホッツェンプロッツ」「クラバート」「小さい魔女」などがあります。

「クラバート」とは

クラバートは、オトフリート・プロイスラー氏が1971年に発表した児童小説です。ドイツ児童文学賞、ヨーロッパ児童文学賞などを受賞しており、プロイスラー文学の頂点ともいわれる1冊です。日本では、中村浩三氏の訳で、1985年に偕成社より発売されています。

偕成社からはハードカバー、文庫(上下巻)で提供されています。私が持っているのは文庫の方です。

「クラバート」は、ドイツとポーランドにまたがるラウジッツ地方の古い伝説を下敷きにして書かれています。物語はどちらかといえば重苦しさがたちこめています。復活祭などキリスト教の行事や習俗に彩られた農村文化を下地に書かれており、古いおとぎ話のような感じがあります。話の中で、主人公クラバートのやりきれなさや切なさなどが上手く描かれています。

(あらすじ)
 村から村への浮浪生活をしていたクラバートは、ある時から奇妙な夢を見るようになる。「シュヴァルツコルムの水車場に来い。お前の損にはならぬだろう!」という声と止まり木に止まった11羽のカラスの夢。
 その声に従って水車場の見習となったクラバートは、昼は水車場の職人として働き、金曜の夜には12羽目のカラスとなって、親方から魔法を習うことになる。
 水車場では、新月の夜に現われる大親分の存在や復活祭の決まりごと。毎年の大晦日には仲間のひとりが犠牲となるなど、常に死の影がつきまとう。修行をへてクラバートは親方と対決することになるが、、、。

私の感想は

東欧に残る伝統的な黒魔術の世界、寒冷で陰湿な地域での重苦しさ、生の喜びと愛への憧れ、背中合わせで忍び寄る死への恐怖などがうまく描かれています。訴えかけてくるものは、単なる道徳的な示唆というより、もっと生の根源に迫るような凄みを感じました。

本当に大人が読んでも面白く、あらゆる世代を対象にした児童文学の枠を超える1冊と思います。大人にも、小学校中高学年のお子さんやお孫さんへのプレゼントとしてもオススメだと思います。

気になった方はぜひ一度チェックしてみてください。

では。